after 16 years

ドイツで夢をみた。あれから16年。

おかげさまで予想をはるかに越える夢を、公私にわたり、その後もたくさんみさせていただいた。

「行かない理由がわからない。行って何かを探してくるものじゃないか」

という、いつもながら友人の言葉に支えられ、いざカタールへ。

今の自分は何をどう感じるのだろうか。

楽しみにしたい。

# by fantasticmomonga | 2022-11-21 17:47 | カタールワールドカップ

夢の終わり ~ WM2006 決勝戦

ヒットラーがベルリン・オリンピックのために使ったスタジアム、それが、今日、これからワールドカップの決勝が行われる舞台だ。ここで、「世界最大の祭典」がフィナーレを迎え、そして、「Say no to racism」のフラッグが大きく掲げられる。
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席は、最前列。ゲームの全体像がつかめないのは残念だが、贅沢は言っていられない。目の前は放送席だし、選手もすぐ近くで見られるし、迫力抜群だ。
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正真正銘、最後のFIFAのアンセムとともに選手入場。

あのジダンのPKにはびっくりした。あの舞台であれをやるとは。
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イタリアが何度もコーナー・キックをうまくあわせているのをみて、あ~、そのうちやられるな、と思っていたら、案の定、同点ゴール。その後は、ご存知のとおり、近年稀に見る好ゲームの決勝。
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そして、あの「事件」を迎える。

おそらく、スタンドにいた観衆のほとんどは、何が起きたのかをまったく理解していなかったと思う。

この大会では、きわどいプレーやラフ・プレーは場内のオーロラビジョンでは放映していない。イタリアのキーパー、ブッフォンが副審に駆け寄り、イタリアの選手が倒れている。少し、時間をおいて、ジダンにレッド・カードだ。

フランス対イタリアの決勝戦とはいえ、おそらく観衆の6・7割はドイツまたはドイツ系の人で、残りがイタリアとフランス、という感じだ。きっと、イタリアのお家芸のカムフラージュで、たいしたこともない接触で大げさに痛がって、ジダンを退場に「追い込んだ」のだろう、と思った。私は、試合後にベルリン中央駅のテレビで初めてジダンの頭突きを目撃する。

この試合が現役最後となるジダンを。

サッカーをするものであれば、国境を越えて「すごいなぁ」と思わせるスーパースターであるジダンを。

ワールドカップでの勝利のために、そんなジダンに満足いく花道すら残してあげることもできないのか、このイタリアという国は。

ドイツは、こういうやり方を忌み嫌う。

このジダンの退場から試合終了までの間、スタジアム全体が「反イタリア」になった。この大会、どの試合でも耳にしたことのないほどのブーイングがイタリアに浴びせられていた。このときは、耳を真面目にふさがないと耐えられないくらいだった。

こういう雰囲気になっちゃったら、もうイタリアが負けるしかないなぁ、と思い始めていた。だって、こんな中でイタリアが勝ったら、どういう終わり方になるんだろうか、この大会。試合内容としても、イタリアの方が優勢だったから、あんなことまでしなくてもよかったのに。。。

激しいブーイングの中、イタリアがPK戦を制した。

彼らは、何の後ろめたさもなく、喜びを爆発させていた。それは、イタリア・サポーターも同じだった。
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そんなサポーターに、ドイツ人やフランス人による勝者に送る拍手はなく、ときには罵声がかけられるシーンもあった。それに対して、

「そんなもん知らんよっ、勝ったモンがエライんじゃいっ!!!」(イタリア語)

と堂々と言い返しているようだった。
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私には、心底、イタリア人はそのように思っているように見えた。そして、ドイツ人は、絶対にこういうことは受け入れない、こういう勝ち方を認めない、と思っているように見えた。きっと、イタリア人にしてみれば、ドイツのようなサッカーをして勝ったとしても、何がうれしいんだ?ということになるのだろう。

価値観の違い、といってしまえば、それだけのことだが、その国の数だけ価値観があって、そして、その国の数だけ、「サッカー」と名のつくゲームがある。ボールをより多くゴールに入れたものが勝ち。どういう勝ち方を目指すかは、それぞれ違う。

ヨーロッパ、南米、アフリカ、アジアとでは全く違うのはもちろんのこと、ヨーロッパの中ですら、イングランド、ドイツ、イタリア、フランス、ポルトガル・・・サポーターの雰囲気も、表情も、チームとしての試合運びも驚くほど、その違いを感じることができた。

それがサッカーであり、少なくとも私にとっては、他の何ものからも得ることができないワールドカップの魅力であり、エネルギーなのだ。
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この一ヶ月間、ドイツで存分に味わうことができた。

小さい頃から、キャプテン翼を読み、マラドーナのポスターを貼り、深夜、テレビにかじりつき、小学生の頃から、勉強していたのと同じぐらいの時間、ボールを追いかけた私。

ありていの言葉だが、夢の一つをかなえることができた。

そして・・・

「一番好きなものであることはわかっているから。こんなこと、今しかできないでしょうに。」と、若干の後ろめたさの残る私の背中をそっと押してくれ、2回にもわたるドイツへの出発前日には、私の大好物の数々を食卓に並べてくれたコロちゃんに大感謝だ。
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   *   *   *   *   *   *

数ヵ月後、NYを去る前にもう一度と、MOMAに行った。去年、MOMAに来たときと同様に、不思議と私をひきつける一枚の絵があった。
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タイトルをみて、そのわけがわかった。

Dynamism of a soccer player
Umberto Boccioni
Italian, 1882-1916

ドイツ・ワールドカップ視察街道 - 完 -
# by fantasticmomonga | 2006-07-09 01:11 | ワールドカップ2006